あれから18年経ちました。
かつての私は「人生とは自らの手で切り開くものだ」と固く信じていました。
この国ではどんなことでも自分次第。努力すれば必ず報われる。
ところが、同時多発テロによって、この信念が一気に崩れ落ちました。
一生懸命頑張って手にしたものでも、外的な要因で一瞬にして奪われる…
この命さえも。
テロリストに乗っ取られ、ワールドトレードセンターに突っ込んだ2機目の飛行機は、ユナイテッド航空175便ボストン発ロサンゼルス行きでした。
亡くなったフライトクルーは私と同じロサンゼルスベースの同僚達…
私がその便に乗っていてもまったく不思議はなかったのです。
日本からの電話で知らされ、TVを付けるとまさに2機目がビルに突っ込んで行くところで、
「Oh My God! Oh My God!」とアナウンサーがうわずった声で繰り返していました。
映画のような映像にすぐには何が起きているのか理解できず、ただただ画面を見つめ続けました。
ユナイテッドのロゴが高層ビルに突撃する映像が、何度も何度も映し出され、気が付くと身体中が震えていました。
翌日もその翌日も、翌週もそのまた翌週も、日に何度も身体が勝手に震え、涙が止まりませんでした。そして夜中に何度も目が覚めるようになったのです。
以後私たちクルーは、フライトの度、死を意識するようになりました。
乗客の誰も彼もがテロリストに見えるのです。
密かに制服のポケットにメロット(氷を割るための金槌)を忍ばせたり、催涙スプレーを隠し持ったりする同僚もいました。
笑顔でのサービスは消え、私たちは乗客の一人一人を監視するようになりました。
何もかもが永遠に変わってしまったのです。
そしてそれは、長期にわたるエアラインの暗黒時代の幕開けでもありました。
空の旅を恐れ乗客が激減するという、私たちにとっての二次災害が起きたのです。
戦争が始まると景気はますます後退して、次々と大手エアラインが経営破綻して行きました。
弊社も例外ではありませんでした。
リストラ、給与カット、退職金の廃止、さまざまな苦水を飲まされました。
それからの約1年半、私はモノクロームの世界に生きていました。
ちょっとのことに怯え、ちょっとのことに涙した時期が終わると、今度は喜怒哀楽の感情が消えていきました。
楽しいも悲しいも感じられないモノクロの世界…
それでも私は、表面的には何とか取り繕って生活していました。
そして奇跡の朝がやって来たのです。
1年半が過ぎたある日…
目覚めると白い光のシャワーが突然、私に降り注いで来ました。
眩しくて目も開けられないほどの明るさ。
光は私の全身を照らし、体の奥にも深く浸透して行きました。
そのときの至福感を、どのように表現していいものか…
私は絶対的な愛の中にいました。
それはほんの数分…もしかしたら数秒の出来事だったのかもしれません。
しかし目を開けると世界は一変していました。
モノクロの世界が色彩豊かなカラーの世界になっていたのです。
何を見てもキラキラと輝いていました。美しい色が溢れていました。
そして体内は愛のエネルギーで満ちていました。
私が体感した初めての奇跡でした。
後にある女性が「それはCosmoc Conscious Momentと言うのですよ」
と教えてくれました。
なるほど、確かにSomething Great=宇宙意識を受け入れた瞬間でもありました。
そしてその日から、私は物事を自分で決めるのではなく、天に「委ねる」生き方をするようになったのです。